東武不動産が展開する「T-home」は、宿泊を通じて街ににぎわいをもたらす、アパートメントホテル型の宿泊事業です。
東武グループの拠点である押上の東京スカイツリータウン®周辺には、国内外から多くの観光客が訪れます。
T-homeでは、ただ泊まって終わるのではなく、地域に点在する施設・店舗を通じて来訪者が街の魅力に触れることを目指しています。
長期間でも快適に過ごせるなど、多くの宿泊者から高評価を得ています。部屋ごとに異なる独自のコンセプトが設定されており、こうした魅力を強みに、施設の規模や棟数も着実に拡大中。
T-homeは、宿泊施設の運営を通じて「街の風景や価値をどうつくっていくか」という問いにも向き合うプロジェクトになっています。
押上を舞台にスタートした、街に泊まる宿泊事業
T-homeの事業が始まったのは2018年。
自社で保有する土地や建物、あるいは新たに取得した不動産を活用し、東京スカイツリータウン®や浅草といった観光スポットに近い押上エリアで、街と調和するような宿泊施設を展開。地域の風景やにぎわいの創出にも寄与することを目指したのです。
宿泊者が街に出て、近隣の飲食店やショップに立ち寄ることで、観光が地域経済にも還元されていく。
T-homeには、そうした「宿泊施設から街につながる」という意図が込められています。
施設の多くは数室のコンパクトな規模でありながら、キッチンや洗濯乾燥機などを備え、長期滞在にも対応。ホテルとも民泊とも異なる、暮らしに寄り添うスタイルで事業が始まりました。
ただし、事業が本格化しようとしていた2020年春には、新型コロナウイルスの影響で足踏みを強いられることに。厳しい時期ではありましたが、こうした経験が、のちの新体制づくりにもつながっていきます。
快適空間にワンポイントの個性をプラス
感染状況の落ち着きとともに体制を立て直し、T-home事業は再始動します。
その象徴的なプロジェクトとなったのが、新築施設として開業した「T-home 彩(SAI)」と「T-home 集(SHU)」です。
内装や設備の設計、ネーミングに至るまで、すべてを事業部メンバーが主体となって企画。部屋ごとにカラーリングの異なる「彩」、セカンドリビングやルーフバルコニーなど大勢でも集い寛げる「集」といった意味を持つ名称を採用し、施設ごとの個性やコンセプトがより際立つようになりました。
さらに、これらの施設では、各部屋のデザインにも変化を加えています。従来は物件単位で統一されていた内装を見直し、部屋ごとに異なるテーマを設定。北欧風、和モダン、モノトーンなど、多彩なスタイルの空間を用意することで、宿泊者が自分の好みに合わせて部屋を選べる仕組みを整えました。
旅行者の利用する予約サイトでは部屋単位での選択が主流なこともあり、こうした特徴がそのまま選ばれる理由につながっています。
江戸風の街並みを生み出す「T-home 景」プロジェクト
2026年2月の開業を目指す「T-home 景(KEI)」は、T-homeシリーズの中でも最大規模となるプロジェクトです。
計画のきっかけは、押上一丁目にあった病院の跡地が新たな活用先を募っていたこと。
東武不動産はこの場所に対し、江戸風の建物が並ぶ「長屋形式」の宿泊施設を提案し、活用事業者として採択されました。
再開発というと高層ビルや集合住宅を連想しがちですが、あえて低層の木造建築を複数棟配置する構成とし、街並みと調和した景観づくりを目指しています。
施設名には「街の風景をつくる」という意味を込め、「T-home 景」と名付けられました。
宿泊棟に加え、一般来訪者も利用できる飲食店舗の誘致も進行中。観光客はもちろん、地域の日常にも自然と溶け込む存在となることを目指し、街にひらかれた施設づくりが進められています。
自由な発想がかたちになる喜び
日常の中でふと浮かんだ「こんな部屋があったら面白そう」といった素朴な発想が、プロジェクトの出発点になることも少なくありません。
たとえば「T-home 景」では、「部屋の中に庭をつくりたい」という声が、インナーバルコニーという形で実現。「路地のような通りを作りたい」という発想も、敷地全体の外構デザインに生かされました。「T-home 集」では、映像鑑賞に適した大型スクリーンが導入され、宿泊者から高評価を得た例もあります。
こうした自由な発想をかたちにしていく一方で、T-homeとして手がけるプロジェクトは規模が大きく、押上という街の景観にも関わるため、大きな責任が伴う事業でもあります。
限られた条件の中でより良いものをつくり、利用者にとって新鮮な体験を提供する。メンバーとともに工夫を重ねて実現していくプロセスには、大きな責任とやりがいが伴っています。
積み上げたノウハウが、新たな地域に繋がっていく
T-homeでは、宿泊施設そのものの設計だけでなく、街とのつながりを生み出す仕掛けにも力を入れています。たとえば、室内のスマートテレビを通じた店舗の情報提供により、ドリンク特典が受けられる仕組みづくりなど、宿泊者が「ただ泊まる」だけでなく、「街に出て楽しむ」体験を後押しする取り組みが計画されています。
そうした工夫を重ねるなかで、T-homeはホテルとも民泊とも異なる宿泊のかたちとして、社内にノウハウを蓄積してきました。なかでも「T-home 景」は、敷地全体を一体的に開発する初のプロジェクトであり、東武不動産の宿泊事業にとって大きな転機と呼べる存在になるでしょう。
「T-home 景」での経験を節目として、今後は東武沿線の別地域への展開も視野に入れながら、地域に寄り添った宿泊のあり方を模索していきます。
※2025年6月末時点の情報です。
東武不動産の街づくり事業